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最新ニュース

  • 2024年01月17日

    ミユキの治療について

    1月13日の朝、国内最高齢ホッキョクグマのミユキが亡くなりました。

    死因は「多発性嚢胞に起因する肝不全」でした。

    今回、少し長くなりますが、ミユキを見守っていただいた皆様に、獣医の目線から詳しく伝えたいと思います。

     

    まず、ミユキに対しては長期間にわたって投薬をしていました。

     

    投薬のきっかけは、数年前からミユキに認められた突発的な体調不良です。

    普段あまり弱い姿を見せることがないミユキが、寝室で伏せの体勢をとったり、地面を掘るような行動をとることがありました。そんな時、ミユキは口をとがらせて「フー、フー」といった、少し苦しそうな呼吸をし、目つきにも元気がありません。はじめてこの行動を認めた時、飼育・獣医がホッキョクグマ舎に集合して対応を協議し、夜遅くまで交代しながら観察したことを記憶しています。

     

    その後、各種検査の結果、既往歴、ホッキョクグマの種としての好発疾患などから、いくつかの原因が推定されました。

    簡単に分類すると

    ・ヘルニア関連
    ・消化管内の病原微生物
    ・肝臓疾患

    です。

     

    ヘルニアについては、以前もブログで書いたので、詳細は割愛します。外科手術が必要な疾患であることから、その準備を対策として実施し、昨年の3月には実際に手術をおこないました。

     

    消化管内の病原微生物については、定期的な便検査で、便中に病原性を有する微生物が増えていることがわかりました。病原微生物の種類も1種類ではなく、体調不良のたびに検査を実施し、必要な投薬をしていました。おそらく園内で一番頻繁に便検査を実施していたように思います。

    しかし、病原微生物が確認できないのに、体調不良が確認されることもありました。

     

    最後が肝臓疾患です。

    実は高齢ホッキョクグマの死因では肝臓関連の疾患は非常に多く、当園で飼育していたオスのアイスも肝臓に腫瘍がありました。他園館でも30歳を超えて死亡したホッキョクグマの多くが、肝臓関連の疾患を患っていました。このような背景から、肝臓疾患についても除外せず、念のため、かなり前からサプリメントを処方していました。

     

    そして2年前、ヘルニアの状況確認のために実施した麻酔下検査での腹部エコーで、ミユキの肝臓に大きな腫瘤が認められました。同時に実施した血液検査も、肝臓の異常を裏付ける結果でした。

     

    そこから肝臓薬の投薬を開始しました。また、定期的に認めていた体調不良の原因が肝臓腫瘤を原因とした痛みである可能性も考慮し、鎮痛剤の使用も開始しました。

     

    投薬に関しては、経口薬と注射薬があるのですが、注射の場合は大きなストレスを伴います。

    しかし、ミユキの体重は200kg以上もあり、経口投薬ではかなりの錠数が必要となります。また、薬の中にはミユキの嫌いな薬もありました。

    この点については、飼育担当者による様々な工夫があり、経口投薬が可能となっていましたので、ミユキには最後までストレスはなかったと思います。

     

    亡くなる数日前、前述した消化管内の病原微生物の治療が上手くいき、便性も回復していました。食欲も旺盛で「調子いいですね」と飼育担当者と話をしていました。

     

    国内最高齢でしたが、展示場に出た時はまだまだ活発な姿もあったので、しばらくはミユキ・ゆめ の 国内最高齢・最年少コンビの交互展示が続くんやなぁ、と思っていました。

     

    亡くなった日の朝、電話でミユキが死んだと連絡が入り、「え?ほんまですか?」という返事をしたと思います。それくらい急でした。

     

    亡くなって病院に運ばれたミユキの解剖準備をしている時も「急すぎて受け入れられへん。」と飼育担当者も話していました。

     

    解剖の時、私がお腹を開かせてもらいました。

    目に入った肝臓の状況から、ミユキの長年のしんどさが伝わってきました。

    強がりのミユキは、こちらが思う以上にしんどい時があったかもしれません。

     

    動物園獣医として、ミユキの突発的な体調不良、ヘルニア手術、解剖の全てに携わり、多くの経験がありました。

    この経験を、ゆめをはじめ、今後のホッキョクグマの飼育・治療に生かせればと思います。

     

    とても元気なミユキの姿を残しておきます。

    DSC03404

    なんで、そんなに怒ってんの?

     

    王子の獣医