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最新ニュース

  • 2023年07月08日

    ミユキ(ホッキョクグマ)の臍ヘルニア手術について

    いつもは検査方法等を紹介していますが、今回は今年の3月22日に実施したミユキの手術について書こうと思います。

     

    ちょっと長めですが、ご容赦ください。

     

    実はミユキは過去にもヘルニア手術をしています。

    直近では2016年9月に実施しましたが、完治には至りませんでした。

     

    術後しばらくするとヘルニア嚢(お腹の黒いモノの正式名称)が少しずつ大きくなり、5年前はソフトボール大(プールに入ると目立つ程度)に、今年に入ってからはバスケットボール大になっていました。

     

    誰が見てもわかる状態になってからは、「ミユキのお腹の黒いものは何?」「治療しないの?」という疑問の声を聞くことも増えました。

     

    今回、王子動物園ではどのような方針でミユキを治療したのかを説明し、皆さんの疑問にも同時に答えられればと思います。

     

    まず、ミユキのヘルニア嚢について、飼育・獣医は早い段階から把握し、症状の推移を注視していました。

     

    「早期発見したなら、早く治療したらいいのでは?」との考えもありますが、手術をしなかった理由は3つあります。具体的には、

    ① ヘルニア嚢の中身が脂肪であれば健康に大きな支障がない。

    ② 国内最高齢のミユキにとって、長時間の外科手術はリターンよりリスクが大きい。

    ③ ホッキョクグマの臍ヘルニア手術は例数も少なく、術式も決まったものがない。

    です。

     

    臍ヘルニアにはいくつか種類があります。

    一番恐ろしいのが「嵌頓(かんとん)ヘルニア」という、ヘルニア嚢の中に腸管が入り込む状態です。

    激痛を伴う腸閉塞のリスクがあり、場合によっては命も落とします。

    そのため、飼育・獣医で相談し、ヘルニアが少し大きくなった時点で一度全身麻酔をかけ、ヘルニア嚢の中身が腸管ではないことを確認しました。

     

    とはいえ、いつ嵌頓ヘルニアに移行するかは誰にもわからないため、緊急手術の可能性を考慮し、過去の手術例や、人の手術方法なども参考にしながら、術式と必要な道具について獣医チームで探索し準備を整えました。

    しかし、準備が整った後も高齢個体であることを考慮し積極的な手術実施は行いませんでした。

     

    その後、大きくなったヘルニア嚢の表面が展示場の岩で擦れ、傷ができました。

    岩の一部を削って滑らかにする工事もしましたが、傷はなくなりませんでした。

     

    このまま傷が悪化すると、夏には傷口の化膿や、ハエが傷口に卵を産んでしまう(蛆がわく)ことが予測されました。

     

    手術をせず、夏の期間は室内で過ごし続けるという方法もありましたが、展示場に出るのが好きなミユキにとっては大きなストレスになるだとうと考え、手術実施について本格的な調整を始めました。

     

    ペットの犬や猫と違い、大型動物は簡単に保定も出来ないため、術後管理がとても難しく、術部の治療期間を考慮して逆算すると、3月末が手術実施のタイムリミットだろうと、関係者で認識を共有しました。

     

    ただ、ミユキの年齢を考えると100%成功する確証はなく、リスクの大きな手術だったので、担当飼育員と獣医でしっかりと意見を交換し、最悪の事態について全員が理解したうえで実施を決定しました。

     

    手術中の詳細は省略しますが、傷口の状態が悪く、想定よりも長時間の手術となりました。

    手術自体はなんとか成功しましたが、術後状態は良いとは言えず、しっかりと回復するかはミユキの体力頼みでした。

    回復には、感染リスクを極力減らし、しっかりと食べて休んでもらうことが重要なため、長期にわたって観覧中止とし、寝室で療養をしていました。

     

    その後、ミユキの状態は徐々に回復に向かい、飼育・獣医は一安心していました。

     

    しかし、数日してミユキが檻に体を擦りつける動きが目立つようになりました。

    擦っている皮膚の状態は徐々に悪化し、最終的には大きな傷が出来てしまいました。

    検査の結果、背中と臀部(おしり)の一部に血流障害等が生じたことが分かりました。

    長時間の手術、ミユキ自身の体重による負荷、高齢のため筋肉が少なくなっていたこと、手術中に同じ姿勢(麻酔中の覚醒対策として四肢をロープで固定)で保温マットに接していたことなど、複合的な要因があったのだと考えています。

    この点については関係者で共有し、次回以降の対策を決めました。

     

    この傷の治療によって、当初の予定よりミユキの観覧中止期間は伸びましたが、結果的にはより長期の療養期間をとることで、ヘルニア手術の患部はしっかりと回復したと思います。

     

    再発の可能性はゼロではないため、今後もしっかり注視していく必要がありますが、ミユキは以前と同じように元気に展示場を闊歩し、雪山を掘っています。

     

    展示場の奥で寝ている時もありますが、お婆ちゃんなので優しく見守っていただければと思います。

     

    次回はデメオの抜歯について紹介出来ればと思います。

     

    王子の獣医

    図3