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最新ニュース

  • 2026年09月09日

    グーンと振ってヨイショと立つ

    グーンと振ってヨイショと立つ

     

    関西ではお馴染みの擬音(オノマトペ)で説明してみました!

    「グーンと振ってヨイショと立つ」は、「座っているキリンの立ち上がり方」の説明です。

    …が、一体何のことだろう?と疑問に思う人も少なくはないと思うので、順を追って説明していきます。

     

    ①      長い首を前後に振って勢いをつけ、頭と首でバランスを取りながら重心を前方に移す。

    ②      腕節(※写真参照)を支えにして上半身を起こすと同時にお尻を持ち上げ、後ろ足を伸ばす。

    ③      頭を振り上げ、その勢いで前足を伸ばし、立ち上がる。

     

     

     

    プレゼンテーション1

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    腕節(わんせつ):ヒトの手首にあたる関節

    飛節(ひせつ):ヒトの足首にあたる関節

    球節(きゅうせつ):ヒトの手(足)の指の付け根にあたる関節

    冠関節(かんかんせつ):ヒトの手(足)の指の第2関節にあたる関節

    蹄関節(ていかんせつ):ヒトの手(足)の指の第1関節にあたる関節

     

    以上の説明でご理解いただけましたでしょうか?

    一言で表した結果「グーンと振ってヨイショと立つ」になりました。

    いずれにしても、言葉で説明するのはとても難しく、動画をご覧いただければと思います。

     

    この様にキリンは一度座ると立つまでに時間がかかるため、安心できる場所でないと座らないと言われています。

    王子動物園では、キリンたちは安心できるようで、座っている姿がよく見られます。

    特に寝室で見られるので、皆さんもぜひキリンテラスの窓から覗いてみてください!

     

    さて、今回Xでの動画投稿だけではなく、ブログで詳しく説明したのには理由があります。

    実は、先日開催されたサマースクールで、キリンの立ち方や座り方などについて色々とご質問を頂きました。口頭ではお伝えしたものの、個人的に『もっと動画や写真と共に説明したかった・・・』と心残りがあったからです。この記事がご質問者様に届けばいいなと思います。

     

     

  • 2026年08月25日

    アジアゾウのマックについて

    前回のお知らせの後も、マックの足の治療のためにできる限り対策を行ってきました。ここで、これまでに行ってきたことを並べてみます。

     

    寝室の柵を改修し、簡易のPCWを取り付けたことでより安全にマックに近づけるようになったので、足の患部の洗浄と消毒がより確実に出来る様になりました。患部の壊死組織を直接取り除いたり、伸びた爪を切ることもできました。柵越しに繰り返し体に触り、慣れてもらうことで、初めて採血も出来ました。

     ゾウ①

     

     

     

     

     

     

     

     

     

      患部の洗浄と消毒は1日4回行っていました。オゾン発生器を使いオゾン水(オゾン水には細菌やウイルスの除去に高い効果がある)で足の洗浄もしました。足浴槽は更に深く改修しました。暑さ対策として電解質をとるためにスポーツドリンクも飲ませました。少しでももたれかかって休めるように放飼場に砂山も作ってみました。足の血行を良くするために温水を体にかけたり、足を何度も上げ下げさせたり、放飼場を歩くように誘導しました。これらの対策により、マックの足が悪化しないよう、できることを工夫してきました。

     ゾウ②

     

     

     

     

     

    そんな中、先日よりマックが寝室に入らなくなってしまいました。前日の朝に寝室に入るときに少しバランスを崩したようでした。それでもその日はその後何度か寝室に入ってきていました。

    はっきりとした原因は分かりません。マックはとても慎重な性格で、どうしても気になることがあるのでしょう。

    そのために、今まで寝室で行っていた治療が一部できなくなってしまいました。現在は放飼場で洗浄と消毒を行っていますが、下が土なので今までのように清潔な環境ではありません。少しでも清潔にと治療するスペースの土をどけてコンクリートの状態にして行っています。今はなんとか寝室に入ってもらおうと、気になっていそうな段差をなくしたり、おいしいおやつで誘導したりなど、いろいろなことを試しています。

    ゾウ③

     

     

     

     

     

     

    マックの対応は飼育係だけではなく、獣医師や管理運営係、設備担当など園全体で現状マックに出来ることを日々相談して行っています。

    なかなかこちらが思うとおりにいかないこともありますが、少しでもマックの状態が良くなる様、またズゼにもできるだけストレスが掛からない様に、これからも試行錯誤しながら飼育をしていきたいと思います。

  • 2026年08月22日

    資料館レポ №29 新しい本入りました!

    こんにちは!

    資料館から久々のブログ更新です。

    新しく入った本が書架に並びましたので、ご案内します。

     

    一般書の新しい本

    ↗一般書の新しい本

     

    種の起源」を読んだふりができる本』

    更科 功 著(ダイヤモンド社)

    生物学界でバイブル的存在のはずの『種の起源』ですが、出版されたのは1859年。今となっては間違っている説があったり、読みにくい文章だったりと、なかなか読了できない本らしい (すみません…実は、私も読んでないので… :oops: ) のです。

    しかし、『種の起源』を理解するための「王道」書を目指す本書は、まさに至れり尽くせりです。当時の間違い改め、難解な文章をわかりやすし、さらには若いころのダーウィンのダメダメさ加減とそれを補って余りある観察眼を指摘し、遠い存在の『種の起源』を身近に感じさせてくれます。そして、『種の起源』はやはり「語り草」になるほど面白い本なのだと気づかせてくれる興味深い一冊です。

     

    『手で見るいのち ある不思議な授業の力』

    柳楽 未来著(岩波書店)

    この本は、ある盲学校の生物の授業の様子を中心に書かれた本です。生徒さん方が実際に骨などに触れて教諭との対話しながら、授業を「受ける」のでなく「動かしていく」様子が描かれています。

    視覚以外の研ぎ澄まされた触覚を使い―つまり「手で見る」ことで―何の動物かも知らされぬまま、動物たちの形態・生態、さらに種までも特定していきます。自ら手繰り寄せた能動的な「学び」は、生徒一人一人自信を持たせ、授業は彼らの発言によって動いていきます。最初の授業から言葉が飛び交っていたわけではなく、じっくりと時間をかけて練り上げてきた授業のありかたです。

    ここでは盲学校の話ですが、それに限らず「学び」の中で実際に体験することは深く心に残り、次の「知」への関心を生み出します。

    当館でも「ハンズオン」といって、実際に手に触れて体験してもらう展示方法をとることがあります。しかし標本は「触れる」ことで傷みやすくなります。貴重な標本資料を「学び」にいかに活用しつつ保存し残していくのか、我々にとっても課題となっています。

     

    ほかにも、動物に関する楽しい本がたくさんあります。

    ↗児童書の新しい本はこちら…

    ↗児童書の新しい本はこちら…

     

    ぜひ、動物科学資料館の図書室に読みに来てね~

    図書 丸代

  • 2026年08月07日

    夏休み

    夏は毎年のように高温を記録するようになりました。

    これまでに経験したことがないような異常に暑い日が続いたり、

    たくさんの人が熱中症で亡くなったりしています。

    最高気温が40℃を超える日を気象庁が「酷暑日」と定めました。

    夏は危険な季節になってしまいました。

     

    動物園では今年、動物や人が少しでも快適に過ごすことが

    できるように色々なことを考えてみました。

     

    これまでもご案内してきましたが

    涼しくて動物も観覧できる「ホッキョクグマ舎」

     

    ☆IMG_1910

     

    IMG_2434

     

     

     

    「アシカ舎」

     

    IMG_2432

     

     

    「コアラ舎」

     

    ☆IMG_1897

     

     

    チンパンジーやオランウータンのいる「類人猿舎(放養式動物舎)」や

     

    ☆IMG_1911

     

     

    「動物科学資料館」に加えて

     

    IMG_1901

     

    ☆IMG_1916

     

     

     

    屋外に設置していたミストや日陰を

     

    IMG_2423

     

     

    これまでよりも大量に増やしました。

     

    IMG_9653

     

    IMG_9712

     

    IMG_9708

     

    IMG_9672

     

     

     

    それがどこにあるのか簡単に分かるように

    クールスポットMAP(マップ)を作成して公開していますので

    ぜひお役に立てていただきたいです。

     

    また動物園では今年も営業時間を2時間延長する「トワイライトZOO」を

    8月8日(土)から10日(月)まで開催します。

     

    DSC_6705 (1)

     

    それぞれの日にたくさんのイベントを実施しますので

    イベント情報をご確認いただいて楽しみにお越し下さい。

     

    ぶろぐのぐ

     

  • 2026年07月29日

    7月29日(水)は世界トラの日です

    絶滅危惧種であるトラの現状を知り、保全のためにできることを考える日として、2010年の国際会議「トラサミット」で制定されました。

     

    当園ではアムールトラ のオスの「ミシュカ」とメスの「レーニャ」を飼育しており、2頭の間で繁殖に取り組んでいます。

     

    ミシュカはオスらしく立派な体と精悍な顔つきで、ガラス越しに近づいてくる姿は迫力満点!レーニャとの同居の時はとても紳士的にレーニャをリードしてくれる素晴らしいオスです。

    IMG_8918

     

    レーニャはクールな澄まし顔とは裏腹に、竹や段ボールなどの遊具に興味津々な一面もあります。少し臆病なところもありますが、少しずつミシュカとの同居にも慣れてきたようです。

    IMG_8919

     

     

    今後2頭の繁殖がうまくいってくれたらと期待しています。

  • 2026年07月04日

    お願い

    「梅雨入り」「台風接近」

    「FIFAワールドカップ2026」などなど。

    先月もたくさんのニュースが世間にあふれていましたが、

    動物園からお送りするニュースは…

    これ!

    6/21(日)に実施したイベントの「世界キリンの日」です。

     

     

    2

     

     

    「世界キリンの日」は1年で最も昼の時間が長い「夏至」にちなみ、

    最も首の長い動物であるキリンについて知識を深めてもらって、

    絶滅の危機から救う保全活動を支援してもらうため

    2014年にキリン保全財団が制定しました。

     

    この日の王子動物園では11:15からと、14:15からの合計2回、

    「世界キリンの日」バージョンの特別ガイドと

    各回20名ずつ限定の餌やり体験を行いました。

     

     

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    さて、昨年から動物園が行う取り組みとして、

    「多様な生命を育む地球と地球上にいるあらゆる生きものの、

    より良い未来のために多様な人々と協力して行動しよう」を目標に、

    「みなさんと一緒に学んで、考えて、行動していきたい」

    と、これまでにもお話ししてきました。

     

     

     スクリーンショット 2026-07-04 141228

     

     

     

    このたび、日本動物園水族館協会(JAZA)が掲げる「将来構想2025」について、アクションプラン(事業計画)が策定されましたので、王子動物園も実現に向けて取り組んでいきます。

    「世界キリンの日」に行ったイベントも、目標を実現できるように決めた15個のアクションに沿ったものとして考えています。

     

     JAZA将来構想2025

     

    スクリーンショット 2026-07-04 141357

     

     

    見てもらえばわかってもらえると思いますが

     

    「7・学びの場」

     さまざまな人たちが深い知識を楽しみながら学べる教育の場となる

    「8・多様な体験」

     利用者に驚き、癒やし、愉しみなどさまざまな体験を提供する

    「13・⾏動変容の誘発」

    ⼈々が未来のために⾃らの⾏動を変 えるきっかけを提供する 

     

    にあてはまるんじゃないかと。

     

    また動物園で開催したイベントのあとには

    参加していただいた皆様に「アンケートのお願い」もしています。

    QRコードからのご案内でいただいたご意見・ご感想を

    今後のイベントのプログラムのなかで充実させたいと考えていますので

    機会がありましたらぜひご協力をお願い致します。

     

    ぶろぐのぐ

     

  • 2026年06月09日

    カッピーと歩んだ9年間

    みなさんこんにちは。ふれあい広場カッピーの飼育担当者です。

     6月8日カカバのカッピー(30歳)が死亡した事をご報告します。

    カッピーがどのように過ごしていたかと、私たちの想いを皆さんにお伝えしようと思い、文字を綴りました。

    長い文章になりますが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。

     

    カッピーは今年の1月で30歳を迎えました。

    馬の平均寿命は25年〜30年と言われています。

     

    そんなカッピーは2025年6月に慢性的な蹄葉炎(ていようえん)と診断されました。また、PPID(下垂体機能障害)でもあると診断されました。 PPIDは蹄葉炎を悪化させる原因にもなり、多毛症や発汗異常、筋力低下など様々な症状を引き起こします。 蹄葉炎は蹄の病気で、馬にとって蹄は第二の心臓と言われるほど、大切な部位で、蹄の病気は命に関わるものです。

    PPIDの治療も試みましたが、カッピーの身体に合わず副作用が大きく現れてしまい、治療を中止せざるを得ませんでした。

    蹄葉炎の治療は決して簡単なものではありません。

    2,3週間に一度、削蹄師による削蹄を行い、その都度蹄に合う蹄鉄を装蹄し、その時々の状態を見て治療を行います。 また、このサイクルをしたからといって完治には至らず長期間のケアが必要なことも多いです。

    蹄葉炎は最悪の場合、蹄の底を蹄骨が突き破る蹄底脱や蹄がスッポリと外れてしまう脱蹄の危険があります。

     

    カッピーの場合、蹄の中にある蹄骨という骨が本来の位置を保てず、少しずつ沈下してしまう状態でした。

    飼育員お手製の蹄保護シューズから始まり オーダーメイドの蹄鉄や、馬用シューズを試みたり、足に負担のかかりにくい床材に変更したり、蹄を伸ばすサプリメントや餌の調整などたくさんのこと試しました。

     

    けれど、蹄葉炎の進行を完全に止める事はできませんでした。

     

    レントゲンには少しずつ変化していく蹄骨が写っており、蹄骨に炎症が起きもろくなっていました。

    慢性的な蹄葉炎から重度の蹄葉炎に進行してしまい「高齢という事や、現状、基礎疾患を抱えている事を考えると完治は極めて難しい」という診断を受けました。

    完治する事は難しいとわかってはいましたが 決して簡単に受け止められる言葉ではありませんでした。

     

     

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    正直何度も思いました。

    「もう、自分の意思で立ち上がり歩く事はできなくなるかもしれない」

    「もう、自力で座ったり寝転んだりする事はできなくなるかもしれない」

     その度に、色んな意味で覚悟をしていました。

    ですが、その私たちの予想を超えてくるのがカッピーでした。

    外に出たがりドアを鼻で揺らす。

     ゆっくりでも歩く。

    木陰にゆっくり歩いて移動し、自分で座り、昼寝をし、満足したら立ち上がり、帰りたいと柵越しに顔を覗かせる。

    その姿を見るたびに「カッピーはまだ大丈夫」ではなく

    「まだカッピーは諦めてない」そんな気持ちになりました。

     

    動物園の飼育員として働いていると、命と向き合う場面はたくさんあります。

    歳を重ね高齢になれば自然と体は衰えます。

    年齢関係なく、動物も病気にもなります。

    治らない病気だってあります。

     

     

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    獣医師も飼育員もカッピーをただ長生きさせることだけを目標としているわけではありませんでした。

    もちろん、少しでも長く生きてほしい。

    でも、それ以上に大切な事は

     「カッピーが、カッピーらしく過ごせるか」という事です。

     

    カッピーにとって何が幸せなのか。

    カッピーにとって何が心地よいのか。

    カッピーは何を望んでいるのか。

     

    この答えはカッピーしか知りません。

     

    だからこそ1番近くにいる私たち飼育員が、毎日観察し、表情や雰囲気、仕草を見て、呼吸、暖かさを感じ、小さな変化も見逃さないようにカッピーとコミュニケーションをとっていました。

     

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    病状だけを見れば、立っている事、歩けている事、食べている事、全てが奇跡でした。

    もちろん痛みはあったでしょう。

    私たちの想像する以上の痛みだったでしょう。

    薬やサプリメントだって、苦くて違和感があったでしょう。

    でも、カッピーはその感情に勝る活力、意欲がありました。

     

    外に出て日向ぼっこしたいという気持ち。

    餌を食べたいという気持ち。

    横になって昼寝したいという気持ち。

    お尻をかいて欲しいという気持ち。

     

    カッピーの担当者になって今年で9年目です。

    カッピーの表情や雰囲気、癖やタイミングは誰よりもわかる自信がありました。

    その分カッピーも、私の癖や表情、声のトーンなどわかるようで、先読みして体を動かしてくれたり、苦手な点眼をしようと心構えしていることがばれて逃げられたりしていました。

     

    もちろん、言葉で意思表示をしてくれるわけではないので、たまに間違ってしまう事もありましたが、行動や表情や雰囲気で伝えてくれていました。

    カッピーに、この気持ちがある限り私たちはその気持ちを尊重したいと思っていました。

     

    なので、雨の日でも出たがれば 屋根の下に出られるよう工夫をしたり

    うまく歩けなくても外に出たがる日は、スタッフ四人でカッピーを担ぎ、日向ぼっこさせたりしていました。

     

    カッピーは、治療の時も不思議なくらい私たちに身を委ねてくれていました。

     身を委ねすぎている事も多々ありましたが……(笑)

    そのおかげでできることや、してあげられることがたくさんありました。

     

    私たちは、カッピーのケアをしているつもりですが

    実際はカッピーから教わる事の方がずっと多かったです。

     

    命と向き合う事。老いること。生きる活力。そして、その個体らしさを尊重すること。

    カッピーは毎日、私たちに様々な事を教えてくれました。

     

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    カッピーと、こう過ごす日々が、私たちの中では当たり前になっていました。

     

    閉園後、いつものようにお手製のハンモックをカッピーの身体に装着し

    ボサボサの前髪を、三つ編みしました。

    よく食べるので、追加でチモシー(牧草)を餌皿に入れ

    「明日休みだから、明後日会おうね」と言葉をかけ、その場を後にしました。

     

    次の日の朝、「カッピーが急変した」という、ふれあい広場のスタッフの電話で飛び起き

    急いで動物園に向かいました。

    「どうか、間に合ってくれ」ただそう願い、向かいました。

     

    ふれあい広場に到着し、急いでカッピーに会いに行くと、昨日まで見ていたカッピーの姿ではありませんでした。

    「カッピー」と、声をかけていつものように頬を撫でました。

    すると、私が来たことがわかったのか、耳をこちらに傾け、目が動きました。

    「笑わなきゃ」

    「私の雰囲気を察さないようにしなきゃ」

    そう思い、いつものように接しました。

     

     

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     獣医師に現状を聞き、状態がかなり悪い事。

    そして、ギリギリのラインで生命を維持してくれていた事を知りました。

     

    立って歩き、意思表示をしっかりしていたあの当たり前の日々が、ほぼ奇跡的な時間だったことを思い出しました。

    見るからに、症状が悪い事はわかりました。

    肺炎を起こし、かなりの高血圧と低血糖で非常に大きな負担が心臓にかかっていました。

    それ以外にも、様々な事がカッピーの身体に起こっていました。

    点滴をしたり、酸素チューブを鼻につけたり、様々な治療、3時間おきの寝返りが始まりました。

     

     

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    馬の脚は「第二の心臓」とも呼ばれ、歩くことで全身の血流を促しています。

    寝たきりで運動ができない状態が続くと、心臓や消化器官などの内臓が正常に機能しなくなり、疝痛(腹痛)などを引き起こしやすくなります。

    人間にとっての「ただの腹痛」とは異なり、馬の疝痛は激痛で、一晩で命を落とす危険性があるのです。

    馬が寝たきりになるという事は命に関わる事なのです。

     

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    「カッピーの現状、今後、カッピーに起こりうる症状を考えたときに安楽死という選択肢を検討しましょう」

    と言われました。

     

    蹄葉炎だと診断を受けた昨年の6月、馬の蹄葉炎は安楽死の案件だという話も聞いてはいました。

    なので、頭の片隅にはありましたが、実際にその現場に直面するとなかなか受け入れ難い事でもありました。

     

    「動物の命を救う獣医という仕事で、目の前の動物の苦痛をとってあげられる最後の唯一の手段なんです」と、言われた事も思い出しました。

     

    ですが、カッピーの担当者として、「今お願いします」とは言えませんでした。

    治療しても難しいとわかっていても、もしかしたらいつもみたいに奇跡を起こしてくれるかもしれない。

    そんな小さな希望を捨てられませんでした。

    そして、獣医師も飼育員の意見を尊重してくれ、さらに治療を行ってくれました。

    低血糖が少し改善されると、目に光が戻り、寝たきりにではありますが、餌が欲しいと訴えてきました。

     

    誤嚥しないように、上体を起こし、カッピーの大好きな餌のレパートリーを並べました。

    手から細かく切ったにんじんを食べたり、チモシー(牧草)を食べたり、満足したら、いらないと顔を振り、意思表示をしてくれました。

     

    「食べてくれた」

    「欲しがってくれた」

    ただ、ただ嬉しかったです。

     

    しかし、容態は悪化していく一方でした。

    薬を投与したり、点滴を流したりしているにも関わらず

    下がってほしくない数値は下がり続け、上がってほしくない数値は上がり続け、呼吸や心拍も変化し

    カッピー自身も時々ぼーっとし、焦点が合わず、呼びかけへの反応もなく、魂ここにあらず。のような時もありました。

    でも、ふっとまた帰ってきて、目が合い、口を動かしたり、体に力を入れ背伸びをすることもありました。

     

     

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    そして一晩、獣医師立会の元、カッピーと過ごすことにしました。

     

    3時間おきの寝返り、24時間続く点滴、排便・排尿のサポート、お腹を動かすために近赤外線を当てたり、足が痺れないようストレッチやマッサージしたりしていました。

    また、眠そうにウトウトはするものの、なかなか寝ないので、いつもの日向ぼっこの時のように頬を撫で続けると、目を瞑り少し眠ってくれたり、何か欲しそうにするたびに、上体を起こし、グリーンスムージーをシリンジで一滴ずつ舌の上に垂らしたりしていました。

     

    時々、何かの違和感で、足を動かしたり、顔を上下に振ったりしていましたが、なだめると、落ち着き、身を委ねてくれていました。

     

    徐々に明るくなる窓を見て

    「カッピー朝が来たよ。次の日を迎えられたよ」と、思わず声が出てしまいました。

     

    朝を迎え、神経症状の眼振や痙攣が出るようになったり、呼吸が乱れ、体温は下がるも、体が濡れるほど発汗したり、症状が悪化する事はあっても、残念ながら良くなることはありませんでした。

    そして、カッピーの様子も、ぼーっとしている事が多くなり、シリンジを噛むほど好きだったグリーンスムージーを舌の上に垂らしても、反応しなくなり、目も合わなければ、声かけをしても無反応で、カッピーが目の前にいるのに、いないように感じるようになりました。

     

     

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    朝一、獣医師含めふれあい広場のスタッフ全員で、カッピーの安楽死について話すことになりました。

     

    小さな可能性があるなら、その可能性に賭けたい。

    カッピーに少しでも生きていてほしい。この想いは皆同じでした。

     

    ただ、カッピーにカッピーらしく過ごしてほしい

    痛みや苦しみは、とってあげたい。この想いも皆同じでした。

     

    現状を客観視した時、今のカッピーの状態は

    「ただ、カッピーにカッピーらしく過ごしてほしい」

    「痛みや苦しみは、とってあげたい」 という事に当てはまりませんでした。

     

    何が正しくて、何が間違えなのか。

    カッピーの本心はどうなのか。

    そんな事、わかりません。

    私だって、カッピーの本心が知りたいです。

     

    だから、カッピーの1番近くにいる私たちが、カッピーの状態を考え判断する必要がありました。

     

    命と本気で向き合う現場で、命を繋ぎ「救う」という事だけではなく、

    自分ではどうにもできない現実を受け入れなければならない時もあるんだと、痛感した瞬間でした。

     

    絶対に受け入れたくなく、拒み続けていた安楽死。

     

    私たち、飼育員と獣医師はそれを選択しました。

     

    何度も、やっぱりやめると言おうと思いました。

    何度も、「今のカッピーの容態は悪化し続けているんだ」と自分に言い聞かせもしました。

     

    自分の中に納得いく答えが出ず、延々と考えてしまう一日でした。

     

    カッピーを見ると、涙がこぼれそうになります。

    しかし、雰囲気や空気感が伝わるとよくないと思い、いつも通りに接しますが

    カッピーは何となくわかってそうでした。私の、「ただ、ただ嫌だ」という感情は隠しきれてなかったと思います。

     

    それを思うと、担当者としてまだまだだな。と思います。

     

     

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    安楽死の実施は、閉園後でした。

     

    残された時間、カッピーと過ごします。

    色んな飼育員の方々が会いに来てくれました。

    飼育担当者、獣医師はもちろん常に隣にいます。

     

    ですが、カッピーはいつものようにはもう、反応しませんでした。

     

    チャームポイントでもあった、ぱっつん前髪の三つ編みを編み直し

    好きだったブラッシングをして、頬を撫でますが、いつものように安心して目を瞑ってはくれませんでした。

     

    沢山の獣医師、飼育員がカッピーを見守る中

    着々と準備が進められはじめました。

     

    何をしても、目が合う事なく反応のないカッピーでしたが

    最後に頬を撫でると、目が横に動き、目が合いました。

    そして、いつものように目を瞑ったんです。

    本当に、いつもする日向ぼっこの時と同じような時間でした。

     

    何で、何で最後になって、反応するんだよ。そう思いました。

     

    今まで見たなかで、1番安らかな顔でした。

     

    鎮静薬を打ち、眠らせたのちに薬が投与されます。

    鎮静薬が打たれると、力が抜け麻酔がきいた状態になるので、瞑っていた目が開きました。

     

    実は、まぶたは筋肉の力で閉じる事ができます。

    しかし、死後や麻酔をかける事でまぶたを閉じる筋肉が機能しなくなるので目が開きます。

     

    6月8日18時06分、カッピー(30歳)永眠

     

    カッピーにとって何が正しかったのか

    カッピーはどう感じていたのか

    今でも考えます。

     

     

    ________________________________________________

     

     

    そして

    今日もいつもの癖で、スマホからカッピーの様子を見ていたカメラのアプリを確認してしまったり

    馬房を覗いたり

    名前を呼んでしまったり

     

    私にとって、当たり前だった事が、当たり前ではなくなったこの瞬間。

    本当に、かけがえのない時間だったんだと、痛いほど感じています。

     

    歳を重ねることは、誰にでも訪れる自然な事です。

    体は少しずつ変わっていきますが、それでも一歩一歩懸命に生きる姿があります。

    「できることを、できるだけ、今日も大切に生きること」

    そんなカッピーの姿を、身近で見ていると、私も頑張ろうと思えました。

     

    私の人生にとって、カッピーの存在は大きなもので、かけがえのない時間で、本当に沢山のことを教えてくれた時間でした。

    こうして、文字として綴っていますが、文字なんかでは表せられないほどの気持ちでいっぱいです。

     

    動物園の飼育員として、みなさんに「伝える」という事をしなければいけません。

     

    カッピーと過ごした時間、経験を伝え、少しでも他の動物達のためになればと思っています。

    また、カッピーのことを、応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

    カッピーと共に、外で過ごしている時間に「かわいそう」という言葉ではなく

    「がんばれ」という言葉をたくさん聞けて、本当に良かったです。

     

    カッピーの担当者になれて、本当によかったです。

    カッピーからすると、思うことはたくさんあったかもしれませんが

    カッピーと過ごした時間は、私にとって宝物です。

     

     

    うまくまとめられず、申し訳ないですが 最後まで読んでくださりありがとうございました。

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  • 2026年05月06日

    思い出

    王子動物園は1951年3月21日に開園しました。

    今年で75周年を迎えることができました。

    これから1年、色々なイベントを開催したいと考えていますが、

    その第一弾として、開園記念日の当日に開催した「記念講演会」の様子を先日youtubeに公開しました。もしよろしければご覧ください。

     

    【アーカイブ】王子動物園開園75周年 記念講演会

     

    図1

     

     

    動物園も開園して75年が経つとあちらこちらで老朽化が目立ちます。

    動物園で1番古くからある建物がゾウ舎で築73年。

     

     

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    次が旧サイ舎の築68年になります。

     

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    それぞれ数回の改修工事をしながら、いまなお現役で頑張っています。

     

    王子動物園の歴史の中では、

    その時代ごとに整備計画が考えられてリニューアルもされてきました。

     

    2003年には新カバ舎をリニューアル。

    動物園などで飼育されているカバの寿命は40年~50年と言われていますが、

    当時49歳でご長寿のカバ「茶目子(メス)」のために

    バリアフリーのおうちを新築しようと計画されました。

     

     

     20260501205331

     

    IMG_2870

     

     

     

    残念ながら…

    完成を目前にして「茶目子」は亡くなってしまいましたが、

    いま盛んに取り組まれるようになった動物福祉を先がけて経験したように思います。

     

    当時の写真を探していると担当の職員から懐かしい話を聞きました。

    「茶目子の老後を考えての新居だったので、

    茶目子の死後、解剖の時に少しだけひげを切って

    完成したプールに入れてあげたのを思い出します」

     

    今朝、園内巡視をしていると、

    野生のカルガモがカバ舎にやってきてお散歩していました。

     

     

    IMG_2838●

     

    IMG_2839

     

     

    王子動物園はこれからもたくさんの動物たちに

    もっともっとやさしい動物園になっていきたいと思います。

     

    ぶろぐのぐ

  • 2026年05月02日

    北園のエミューたちについて

    昨年12月から病院舎にて体調管理をおこなっていた東側エミュー(オス)が、3月に循環不全のため亡くなりました。昨年の12月には西側エミュー(メス)も生殖器疾患のため亡くなっており、王子動物園にいるエミューは現在1羽となりました。

     

     

    この3羽のエミューは、2002年に宮崎からみんな一緒に来園してきました。

    ちゃんとした年齢がわからないのですが…来園当時でもう成鳥だったという話から、20歳は超えていると推定されます。エミューの平均寿命は20~30年と言われているので、かなり高齢に近い個体だと思われます。

     

     

    そんな20年以上も王子動物園で過ごしてきたエミューたち、私はまだ3年ほどしか担当していないのですが、担当になりエミューという動物についてたくさんのことを知ることができました(水浴びが大好きだったり、オスとメスで鳴き声が違っていたり)。

     

     

    目が赤い…顔が怖い…などの声が聞こえてくることも多いですが、3羽とも少し臆病で、そして穏やかな性格です。水浴びが好きで、暑い時期にはシャワーとホースの二刀流で水浴びをしていたこともあります。

     

     

    もう3羽みんなでの水浴びしている姿がみれないと思うと寂しいです。

     

     

    3羽いた展示場には現在1羽のみとなっており、もしかしたらみていただく方たちは少し寂しい気持ちになってしまうかもしれません。

     

    しかし担当者としていつまでも寂しいままではいられません。現在も元気に過ごしてくれているニッシーを、まだまだ元気でいてもらえるようしっかり見守っていき、これからもエミューについての魅力などを皆様に伝えていけたらなと思っています。

     

     

     

    長い間王子動物園のエミューたちを愛してくださり、ありがとうございます。1羽となってしまいましたが、これからもあたたかく見守っていただけたら…と思います。

     

    亡くなった2羽も、長い間お疲れ様。3羽とも王子動物園に来てくれてありがとう。                                                  

     

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    (3羽一緒に水浴びをしている様子)

     

     

    北園担当

  • 2026年03月06日

    ガチ(本気)で

    2月27日は「国際ホッキョクグマの日」。

    世界中のみなさんに絶滅の危機に瀕しているホッキョクグマの保全状況についての認識を高めてもらい、理解を深めてもらおうとする目的で制定されました。

     

    王子動物園ではこの日にちなんで2月22日(日)に、

    担当者の講演と「キーホルダーづくり体験」のワークショップを開催しました。

     

    飼育担当者からは野生のホッキョクグマの現状や、

    王子動物園で取り組んでいる環境エンリッチメントのお話しを。

     

    1

     

     

    動物科学資料館の担当者からは、

    私たちが利用しているプラスチックが環境にどんな影響をあたえているのか、

    私たちがいま何をしなければいけないのかについてお話ししました。

     

     

    2

     

     

    以前にもブログやX(エックス)などで紹介しましたが、

    王子動物園のホッキョクグマ舎には冬に巨大化する雪山があります。

     

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    「ゆめ」は野生のホッキョクグマがアザラシなどの巣穴を掘ったり叩いて壊したりする行動をこの雪山で再現しながら、いきいきとした動きを見せてくれています。

     

    ある日もそんな光景を見ていると、

    観覧用のガラス窓の下からひょっこり…

     

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    あれっ!?

    こんな近くで「ゆめ」の顔見れたっけ!?

    なんと、雪が積もり過ぎて足場となって「ゆめ」の手が届くような感じさえ…

     

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    あわてて担当者に話しに行くと、

    「はい。なので、一定の高さ以上にならないように毎日雪かきをしています。」

    「なるほど!」

     

    お手伝いがてら雪かきを体験してみました。

     

    しかし、なんと大変なこと!

    雪の上側はふわふわだけど、そのすぐ下はカチカチの氷です。

    30分も体験したらへとへとに。(>_<)

    まさか神戸で本気の雪かきをするとは。

     

    降らせる雪を減らせばいいようなものですが、やはりゆめのためには、毎日ふわふわの新しい雪を用意してあげたいということです。

     

     

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    動物のために取り組んでいる環境エンリッチメントとは、

    なかなか簡単なことではなかったと身をもって思いました。

     

    ぶろぐのぐ