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  • 2025年07月24日

    動物専門員の日常#19 フラミンゴの繁殖管理~産みの親ではなく、仮親をたてる~

    先日のブログでお知らせした通り、今年もベニイロフラミンゴのヒナが誕生をしました。

    実は、そのあとにこっそりと【6月24日】と【7月10日】に、それぞれベニイロフラミンゴのヒナが1羽ずつ孵化しています。

    (写真1)里親

     

    【6月24日】と【7月10日】に誕生したヒナは特別な経緯があったので、

    その裏話を少しアカデミックに紹介したいと思います。

     

    ―フラミンゴたちの子育て事情―

    王子動物園ではベニイロフラミンゴとヨーロッパフラミンゴの2種類を同じ場所で混合飼育しているのですが、その個性はさまざまです。上手く産卵・抱卵してくれるペアもいれば、適さない場所で産卵してしまい、卵のまわりを困ったようにうろうろしていたり、良い場所で産んだはずなのに途中で抱卵を放棄したり、なかなか一筋縄ではいかないのが現実です。

     

    実は【6月24日】と【7月10日】に誕生したヒナにはそれぞれにハードルがありました。

     

    ひとつはこれまで、孵化に成功したことがない場所(通路側)で産み落とされた卵でした。その場所は来園者との距離が近く、柵越しとはいえ、人の気配が絶えません。飼育員も掃除のためによく通る場所のため、安全に育てるには不安が残る場所です。そしてもうひとつの卵は親鳥が卵への関心をあまり示さずにいました。巣のなわばり争いも激しく、他の個体から守り切ることができない状況でした。

     

    このまま置いておくと、どちらの卵も無事に孵化させるのは難しい…。

    人工育雛という方法もありますが、十分なケアを継続できるか、育ったあとのヒナが群れに戻れるのか、といった課題もありました。

     

    そこで、選んだのは当園で過去にも成功事例のあった

    「別のペアで仮親を立てる」という方法でした。

     

    ―仮親を立てる―

    いったい、どのようにフラミンゴ自身はヒナを認識しているでしょうか?

    実は産み落とした卵を個別に認識しているわけではありません。基本的にフラミンゴたちは守っている巣を認識しているだけだと言われています。そして、孵化する少し前に卵の中でヒナが鳴き声を発するのですが、親鳥とヒナの間で「音声のコミュニケーション」をとり、孵化後もお互いを認識することができます。フラミンゴのペアが抱卵を始めてから孵化するまでの日数は平均で28日前後と言われており、その間にそっと卵を入れ替えれば自分の卵だと認識してくれる可能性があります。

    今回、抱卵・子育てが得意なヨーロッパフラミンゴのペアに仮親になってもらい、ベニイロフラミンゴが抱卵を放棄した本物の卵を託すという取り組みを実施しました。ヒナの最初の嘴打ち(はしうち)の瞬間を見たときには、嬉しかったです。その後も仮親が子育てにしっかりと取り組んでくれて、群れも安定しているため、ほっとしています。

     

     

    ―仮親を立てることはアニマルウェルフェア(動物福祉)につながるのか?―

    動物を飼育していく上で、アニマルウェルフェア(動物福祉)は欠かすことはできません。アニマルウェルフェアとは“動物たちが身体的及び心理的に幸福であること”を意味し、それは科学的な根拠に基づいて評価する必要があります。今回、繁殖制限中のヨーロッパフラミンゴに別種であるベニイロフラミンゴの卵を抱かせて、抱卵・子育てに取り組みました。抱卵・子育てはフラミンゴ自身が大量のエネルギーを使うため、仮親ペアの選び方や体力的に負担になりすぎないかなどの見極めが重要です。しかし、抱卵・子育てが得意なヨーロッパフラミンゴのペアにとっては、本来の行動を引き出すことができるため、精神的な充足や自然な子育て行動を維持できる可能性があります。ヒナ誕生ということに加えて、繁殖制限がある中でも、今を生きているフラミンゴたちへのアニマルウェルフェア向上にもつながることが期待されます。

     

    ―限られた条件の中で少しでも良い方法を選ぶ―

    フラミンゴたちのため、そして未来の動物園のために、「今できるベストは何なんだろう?」と担当者はいつも頭を悩ましています。時には「フラミンゴを騙しているのでは?」と純粋に質問をされ、複雑な気持ちになることもあります。未来にベニイロフラミンゴという種を確実に残していくために、アニマルウェルフェアを考えながら環境づくりに取り組んでいこうと思います。

     

    ・・・とお堅いはなしは、ほどほどにして

    今回、無事に育ってくれて本当によかったです。

    今の時期にしか見ることのできないふわっふわなフラミンゴのヒナにぜひ会いにきてくださいね。

     

     

    動物専門員 あお & 飼育員 まーくん