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2023年09月20日
六甲山の自然 6 オオマリコケムシ(別名:クラゲコケムシ) Pectinatella magnifica
8月初旬に再度公園にある修法ヶ原池に行ってきました。
池の周りには立派な赤松が植えられており、ハイカーやバードウオッチング、家族やペットと一緒に散策される方がたくさん見られます。都会に近いにも関わらず静かな山の中でのんびり過ごすには絶好の場所です。ちなみにスマホもほとんど圏外でした。
修法ヶ原池に到着すると、池の周囲の浅瀬に見たこともない卵のような塊がたくさんありました。
一番大きなもので40cm×40cmぐらいありました。
1か月前に来た時には見られませんでした。帰ってから調べると、オオマリコケムシ(別名:クラゲコケムシ)と言う外肛動物に属している北米原産の外来生物でした。
1.5mmほどの個体が集まり寒天物質を出して、最大で1mぐらいの群体を形成すると言われています。兵庫県南部のため池でよく見られるそうです。
池や水路などで大発生して、取水口や水門が詰まるなどの報告があります。また、水質が悪化した水域で多く見られるそうです。
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2023年09月19日
六甲山の自然 5 アオゲラ
アオゲラ Picus awokera awokera
北海道を除く全国に分布
Cランク(神戸版レッドリスト2020)
Cランクとは、神戸市内において存続基盤が脆弱な種。極力、生息・生育環境、自生地などの保全が必要な種
7月初旬、六甲山に車で向かいました。山の中の駐車場に車を停めて外に出るとキョッキョッと大きな声が聞こえてきました。声のするところに近づいても一向に鳴きやみません。鳴き声のする木の上の方をみると逃げることもなくアオゲラが鳴き続けていました。アオゲラは大型のキツツキの仲間です。アオゲラに出会ったのは初めてのことでした。ずっと見上げているとバードウォッチングをされている方が来られて、ここには巣があって、そろそろ雛が巣立ちすると親切に教えてくれました。アオゲラを警戒させてはいけないと何枚か写真をとってすぐに立ち去りました。
アオゲラのいたところは自動車道路から5mぐらいの比較的開けたところで、ハイカーもたくさん通るところなので、車や人への警戒心は少ないのかもしれません。
アオゲラは分布を拡大中で、山地部だけでなく住宅地へも分布が拡がっていると言われ、その要因は営巣に十分な太い木が住宅街にも増えていることや食物条件もよくなっていることなどが考えられると報告されています。平野部の多い明石市でも生息が確認されています。
キツツキ類は今まで小型のコゲラしか見たことがなかったので、アオゲラに出会えて嬉しい1日になりました。
今まで両生類や哺乳類の食痕調査をしてきたため、下ばかり見て歩いていたので、いろんな動物に出会っていても気が付かなかったのかもしれません。フィールドに出たら上も下も遠くも近くも見なければと思いました。
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2023年08月17日
六甲山の自然 4 ソウシチョウ
ソウシチョウ Leiothrix lutea
中国南部からヒマラヤにかけて分布。
神戸版ブラックリスト2020の外来生物種
神戸版ブラックリストとは、神戸市の生態系に悪影響を及ぼす又はそのおそれのある外来種(外国か他地域から持ち込まれた生き物)のリストのこと。
外来生物種とは、国外から侵入して生態系に著しい被害を与えている、又は与えるおそれのある動植物で、すでに駆除等の対策が講じられている、もしくは今後の実態把握に努めて対策を検討する必要がある種のこと
日本では江戸時代から輸入され飼い鳥として飼育されていたと言われています。野生化については家庭や業者から逃げ出したものや、放鳥が原因ではないかと言われており、日本における野生化については,1931年に神戸市の再度山で確認され、その後1980年頃から関東以南で生息が確認されていると報告されています。
ソウシチョウによる在来種への影響については、ウグイスの繁殖成功率が低下することが報告されています。
これはソウシチョウによる直接的な影響ではなく、繁殖環境が両種ともにササ類の繁茂する森林であることから、巣が高密度となり捕食者を繁殖場所に誘引するためではないかと報告されています。
六甲山では再度山や摩耶山、六甲山上の各所で観察しています。特に摩耶山では頻繁に観察されます。
摩耶山では在来種のシジュウカラやウグイスなども多く観察されますが、ソウシチョウはさらに多く見られ最優占種またはその可能性のある種になっているのではないかと思われます。
ソウシチョウの増加要因としては、繁殖期が4~10月と長いことや六甲山には繁殖に適したササ類の繁茂する森林が多くみられることが考えられます。
美しい鳥ですが、在来種を守るためにもソウシチョウの分布域を調べることも重要だと考えています。
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2023年08月08日
六甲山の自然 3 日中にモリアオガエルの産卵に出会った!
モリアオガエルの産卵は主に夜間に行われます。しかし、一人で夜の六甲山に行く勇気もなく、産卵シーンを見ることはあきらめていました。
7月初旬、この日は朝7時頃に繁殖地に着きました。繁殖シーズンも終わりをむかえ、どれくらいの産卵があったのか見られたらという程度の気持ちで池に向かいました。
そしたら、なんと運よく産卵シーンに出くわしたのでした。メス1匹に複数のオスが抱きついて産卵しているところでした。
しかも産卵が終わってオスたちが一斉に木に登って卵から遠ざかって行く瞬間も見られました。なかには木に登るのに失敗して池に落ちるオスもいました。
初めて産卵シーンを見たのと産卵が終わって我先にと急いで卵から離れるオスたちに感動しました。産卵中は捕食者に襲われやすいからなのかもしれません。
モリアオガエルの成体を捕食するのは爬虫類ではシマヘビやアオダイショウ、ヤマカガシなどで、哺乳類ではアライグマで報告されています。モリアオガエルの卵の捕食については「野生ニホンザルによるモリアオガエルの泡巣の捕食事例」という報告があります。
モリアオガエルが生息できる条件として、周りに森林があり池にはり出した木があること、餌としての昆虫類が豊富であることなどがあげられます。このようにモリアオガエルが生息している環境は生態系の多様性が保たれていると考えられます。
しかし、コイやウシガエルが生息している池ではモリアオガエルの産卵は確認できなかったという報告や、ウシガエルが定着した池で在来のモリアオガエルが見られなくなったという報告もあります。池や川に本来生息していない生物を放すことで簡単に生態系の多様性を崩してしまうことになるので注意しなければなりません。
オカトラノオの花が綺麗に咲いていました
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2023年07月03日
六甲山の自然 2 モリアオガエル
モリアオガエルRhacophorus arboreus
日本の固有種。本州のほぼ全域に分布。
Bランク(神戸版レッドリスト2020)
Bランクとは、神戸市内において絶滅の危機が増大している種など、生息・生育環境、自生地などの保全が必要な種
モリアオガエルは地方によっては天然記念物に指定されています。六甲山系では、西宮市、芦屋市、神戸市で確認しています。繁殖期は池の周辺に生息するが、非繁殖期には池から離れた樹林内などに生息します。
雨の日に六甲山に登ると、近くに池もない稜線沿いの登山道で見つけたこともあります。
成体のサイズは、雄が約40-60mm、雌が約60-80mmと大きなカエルです。
六甲山では5月下旬から6月にかけて産卵が見られます。
池に張り出した木の枝先のほうに白い泡状の卵を産みます。
産卵は夜間に行われるため、昼間に姿を見られることは少ないです。
産卵から1~2週間ぐらいで、孵化したオタマジャクシは、池に落ちて育ちます。
6月に六甲山に行くとモリアオガエルが「コロコロ」と鳴いているので卵を見つけるのは比較的容易です。コンクリートで囲まれた人工の池でも卵をたくさん見つけています。「えっ、こんな池に」と思うところでも生息していることがあります。希少なカエルなので捕まえずに見守って下さいね。
モリアオガエルの繁殖時期には、いろんな種類のアジサイが咲いているので、梅雨の時期の楽しみでもあります。
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2023年06月13日
六甲山の自然 1 六甲山のカエル
王子動物園は六甲山の麓にあり、園内からも六甲山を眺めることができます。そんな六甲山にどんな自然や生き物たちがいるのか、不定期ですが「六甲山の自然」と題して、山を歩いて出会った生き物たちを紹介していこうと思います。環境保全の観点から詳細な場所は明記しない場合があります。
今回は、4月中旬から5月中旬に見られたカエルについてお話します
ニホンヒキガエルBufo japonicus japonicus
本州の近畿以西、四国、九州などに分布
Cランク(神戸版レッドリスト2020)
Cランクとは、神戸市内において存続基盤が脆弱な種。極力、生息・生育環境、自生地などの保全が必要な種
六甲山のとある池の周囲の浅瀬が黒いものに囲まれていました
黒い塊が小さく動いているので、ハイカーから「なにこれ?」って声が聞こえました。密集しているのでオタマジャクシに見えなかったようです。
さらに近寄り、よく見ると小さなオタマジャクシであることがわかります
1か月後に同じ池に訪れると、オタマジャクシはいなくなり、小さな幼体が池の周りの陸地で見つかりました。
このように、春になると六甲山のいくつもの池でヒキガエルのオタマジャクシを見ることができます。池の外周が真っ黒になるくらいに見られます。このオタマジャクシから大人のヒキガエルになれるのは1万匹に1匹ぐらいと言われているので、もし見つけても捕まえずに見守ってあげてくださいね。
タゴガエル Rana tagoi tagoi
本州、四国、九州に分布
Cランク(神戸版レッドリスト2020)
Cランクとは、神戸市内において存続基盤が脆弱な種。極力、生息・生育環境、自生地などの保全が必要な種
和名と学名は採取者である両生類学者の田子勝弥氏の名前がつけられています。
水の少ない細い川沿いの登山道でタゴガエルに出会いました。
赤茶色の綺麗なカエルです。
六甲山では5月頃が繁殖期となります。川沿いを歩いているとあちらこちらから鳴き声が聞こえてきます。産卵場所は川沿いの岩の隙間や、土にできた穴の中などです。鳴き声は聞こえても姿を見られることは少ないカエルです。
タゴガエルの生息環境
鳴き声が聞こえた土の壁に開いた穴。このようなところや岩の隙間などで産卵します。
雨で穴から流れ出た卵
産卵は30~160個の卵を産むと言われています。孵化したオタマジャクシは、餌を食べずに卵黄の栄養だけで成長してカエルになると言われています。
今度、六甲山に行ったときには、この卵から成長したカエルに出会えたらいいなと思っています。
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2019年11月29日
動物いろいろ ノドの空気袋
大型類人猿やフクロテナガザルには、
声帯の上の喉頭室から
空気の袋(喉頭嚢)がのびています。
この機能にはいろいろな仮説があります。
大声を繰り返すときに過呼吸を軽減する。
袋を膨らませて大きく見せる。
うなり声やドラミングを共鳴させるなど、
議論が分かれています。
首にノドボトケが目立つヒトには、
袋の痕跡があるかないかです。
(なんの専門)
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2019年11月01日
動物いろいろ 白い動物たち
動物の体色や模様はいろいろです。
白い色に着目してみました。
ホッキョクグマは黒に近い色の肌に
白く見える透明の毛が生えています。
雪と氷の生息地では
白は目立たず、有利です。
シロフクロウのオスは真っ白になります。
北極圏のツンドラ地帯では
風景に溶け込み、
見つけるのは難しいです。
シロクジャクは目が赤茶色のまま、
インドクジャクの白変種です。
林や草原の生息地では目立ち
捕食動物にねらわれ易いです。
ビルマニシキヘビは
東南アジアのジャングルや水辺に生息し、
体表にはふちが黒い茶色の模様があります。
アルビノ個体では黄色模様となり、
目は色素を欠いて血管の赤色です。
(なんの専門)
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2019年10月26日
動物いろいろ ネコ科の耳
体表から張り出した耳介は
音を集めるだけでなく、
目印にも役立ちます。
オオヤマネコの耳介には
先端に長い房毛が生え、
裏の中央に白い斑があります。
ボブキャットの耳介にも
先端に短い房毛が生え、
裏の中央に白い斑があります。
ヒョウの耳介には房毛がなく、
裏の白い斑は先の方にあります。
トラの耳裏には黒地に白く
虎耳状斑が浮かび上がっています。
(なんの専門)
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2019年10月19日
動物いろいろ 草食動物の耳
体表から張り出した耳介は
異音や仲間の合図を集め、
捕食動物の発見に役立ちます。
キリンの耳は横位置前向きだけでなく、
たて位置や後向きにもなります。
おとなのキリンが捕食動物を発見すると、
必殺キックで反撃することもあります。
シマウマは広い視野をもちますが、背後は見えません。
耳を後ろに向け、警戒しています。
あいさつは耳を上げ、攻撃は耳を下げます。
オスリーダーは、群れを守るために
捕食動物をけったり噛んだり攻撃することがあります。
群れで疾走して逃げることもあります。
ロバは用心深く、
仲間のウマのようにおびえて駆け出さず、
立ち止まるか数歩走ります。
本来は受身ですが、子を守るときは攻撃的です。
シタツンガは南西アフリカの沼地や湿地に生息し、
身の危険を感じると、水の中に逃げ込みます。
(なんの専門)
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
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