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最新ニュース

  • 2026年06月09日

    カッピーと歩んだ9年間

    みなさんこんにちは。ふれあい広場カッピーの飼育担当者です。

     6月8日カカバのカッピー(30歳)が死亡した事をご報告します。

    カッピーがどのように過ごしていたかと、私たちの想いを皆さんにお伝えしようと思い、文字を綴りました。

    長い文章になりますが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。

     

    カッピーは今年の1月で30歳を迎えました。

    馬の平均寿命は25年〜30年と言われています。

     

    そんなカッピーは2025年6月に慢性的な蹄葉炎(ていようえん)と診断されました。また、PPID(下垂体機能障害)でもあると診断されました。 PPIDは蹄葉炎を悪化させる原因にもなり、多毛症や発汗異常、筋力低下など様々な症状を引き起こします。 蹄葉炎は蹄の病気で、馬にとって蹄は第二の心臓と言われるほど、大切な部位で、蹄の病気は命に関わるものです。

    PPIDの治療も試みましたが、カッピーの身体に合わず副作用が大きく現れてしまい、治療を中止せざるを得ませんでした。

    蹄葉炎の治療は決して簡単なものではありません。

    2,3週間に一度、削蹄師による削蹄を行い、その都度蹄に合う蹄鉄を装蹄し、その時々の状態を見て治療を行います。 また、このサイクルをしたからといって完治には至らず長期間のケアが必要なことも多いです。

    蹄葉炎は最悪の場合、蹄の底を蹄骨が突き破る蹄底脱や蹄がスッポリと外れてしまう脱蹄の危険があります。

     

    カッピーの場合、蹄の中にある蹄骨という骨が本来の位置を保てず、少しずつ沈下してしまう状態でした。

    飼育員お手製の蹄保護シューズから始まり オーダーメイドの蹄鉄や、馬用シューズを試みたり、足に負担のかかりにくい床材に変更したり、蹄を伸ばすサプリメントや餌の調整などたくさんのこと試しました。

     

    けれど、蹄葉炎の進行を完全に止める事はできませんでした。

     

    レントゲンには少しずつ変化していく蹄骨が写っており、蹄骨に炎症が起きもろくなっていました。

    慢性的な蹄葉炎から重度の蹄葉炎に進行してしまい「高齢という事や、現状、基礎疾患を抱えている事を考えると完治は極めて難しい」という診断を受けました。

    完治する事は難しいとわかってはいましたが 決して簡単に受け止められる言葉ではありませんでした。

     

     

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    正直何度も思いました。

    「もう、自分の意思で立ち上がり歩く事はできなくなるかもしれない」

    「もう、自力で座ったり寝転んだりする事はできなくなるかもしれない」

     その度に、色んな意味で覚悟をしていました。

    ですが、その私たちの予想を超えてくるのがカッピーでした。

    外に出たがりドアを鼻で揺らす。

     ゆっくりでも歩く。

    木陰にゆっくり歩いて移動し、自分で座り、昼寝をし、満足したら立ち上がり、帰りたいと柵越しに顔を覗かせる。

    その姿を見るたびに「カッピーはまだ大丈夫」ではなく

    「まだカッピーは諦めてない」そんな気持ちになりました。

     

    動物園の飼育員として働いていると、命と向き合う場面はたくさんあります。

    歳を重ね高齢になれば自然と体は衰えます。

    年齢関係なく、動物も病気にもなります。

    治らない病気だってあります。

     

     

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    獣医師も飼育員もカッピーをただ長生きさせることだけを目標としているわけではありませんでした。

    もちろん、少しでも長く生きてほしい。

    でも、それ以上に大切な事は

     「カッピーが、カッピーらしく過ごせるか」という事です。

     

    カッピーにとって何が幸せなのか。

    カッピーにとって何が心地よいのか。

    カッピーは何を望んでいるのか。

     

    この答えはカッピーしか知りません。

     

    だからこそ1番近くにいる私たち飼育員が、毎日観察し、表情や雰囲気、仕草を見て、呼吸、暖かさを感じ、小さな変化も見逃さないようにカッピーとコミュニケーションをとっていました。

     

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    病状だけを見れば、立っている事、歩けている事、食べている事、全てが奇跡でした。

    もちろん痛みはあったでしょう。

    私たちの想像する以上の痛みだったでしょう。

    薬やサプリメントだって、苦くて違和感があったでしょう。

    でも、カッピーはその感情に勝る活力、意欲がありました。

     

    外に出て日向ぼっこしたいという気持ち。

    餌を食べたいという気持ち。

    横になって昼寝したいという気持ち。

    お尻をかいて欲しいという気持ち。

     

    カッピーの担当者になって今年で9年目です。

    カッピーの表情や雰囲気、癖やタイミングは誰よりもわかる自信がありました。

    その分カッピーも、私の癖や表情、声のトーンなどわかるようで、先読みして体を動かしてくれたり、苦手な点眼をしようと心構えしていることがばれて逃げられたりしていました。

     

    もちろん、言葉で意思表示をしてくれるわけではないので、たまに間違ってしまう事もありましたが、行動や表情や雰囲気で伝えてくれていました。

    カッピーに、この気持ちがある限り私たちはその気持ちを尊重したいと思っていました。

     

    なので、雨の日でも出たがれば 屋根の下に出られるよう工夫をしたり

    うまく歩けなくても外に出たがる日は、スタッフ四人でカッピーを担ぎ、日向ぼっこさせたりしていました。

     

    カッピーは、治療の時も不思議なくらい私たちに身を委ねてくれていました。

     身を委ねすぎている事も多々ありましたが……(笑)

    そのおかげでできることや、してあげられることがたくさんありました。

     

    私たちは、カッピーのケアをしているつもりですが

    実際はカッピーから教わる事の方がずっと多かったです。

     

    命と向き合う事。老いること。生きる活力。そして、その個体らしさを尊重すること。

    カッピーは毎日、私たちに様々な事を教えてくれました。

     

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    カッピーと、こう過ごす日々が、私たちの中では当たり前になっていました。

     

    閉園後、いつものようにお手製のハンモックをカッピーの身体に装着し

    ボサボサの前髪を、三つ編みしました。

    よく食べるので、追加でチモシー(牧草)を餌皿に入れ

    「明日休みだから、明後日会おうね」と言葉をかけ、その場を後にしました。

     

    次の日の朝、「カッピーが急変した」という、ふれあい広場のスタッフの電話で飛び起き

    急いで動物園に向かいました。

    「どうか、間に合ってくれ」ただそう願い、向かいました。

     

    ふれあい広場に到着し、急いでカッピーに会いに行くと、昨日まで見ていたカッピーの姿ではありませんでした。

    「カッピー」と、声をかけていつものように頬を撫でました。

    すると、私が来たことがわかったのか、耳をこちらに傾け、目が動きました。

    「笑わなきゃ」

    「私の雰囲気を察さないようにしなきゃ」

    そう思い、いつものように接しました。

     

     

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     獣医師に現状を聞き、状態がかなり悪い事。

    そして、ギリギリのラインで生命を維持してくれていた事を知りました。

     

    立って歩き、意思表示をしっかりしていたあの当たり前の日々が、ほぼ奇跡的な時間だったことを思い出しました。

    見るからに、症状が悪い事はわかりました。

    肺炎を起こし、かなりの高血圧と低血糖で非常に大きな負担が心臓にかかっていました。

    それ以外にも、様々な事がカッピーの身体に起こっていました。

    点滴をしたり、酸素チューブを鼻につけたり、様々な治療、3時間おきの寝返りが始まりました。

     

     

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    馬の脚は「第二の心臓」とも呼ばれ、歩くことで全身の血流を促しています。

    寝たきりで運動ができない状態が続くと、心臓や消化器官などの内臓が正常に機能しなくなり、疝痛(腹痛)などを引き起こしやすくなります。

    人間にとっての「ただの腹痛」とは異なり、馬の疝痛は激痛で、一晩で命を落とす危険性があるのです。

    馬が寝たきりになるという事は命に関わる事なのです。

     

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    「カッピーの現状、今後、カッピーに起こりうる症状を考えたときに安楽死という選択肢を検討しましょう」

    と言われました。

     

    蹄葉炎だと診断を受けた昨年の6月、馬の蹄葉炎は安楽死の案件だという話も聞いてはいました。

    なので、頭の片隅にはありましたが、実際にその現場に直面するとなかなか受け入れ難い事でもありました。

     

    「動物の命を救う獣医という仕事で、目の前の動物の苦痛をとってあげられる最後の唯一の手段なんです」と、言われた事も思い出しました。

     

    ですが、カッピーの担当者として、「今お願いします」とは言えませんでした。

    治療しても難しいとわかっていても、もしかしたらいつもみたいに奇跡を起こしてくれるかもしれない。

    そんな小さな希望を捨てられませんでした。

    そして、獣医師も飼育員の意見を尊重してくれ、さらに治療を行ってくれました。

    低血糖が少し改善されると、目に光が戻り、寝たきりにではありますが、餌が欲しいと訴えてきました。

     

    誤嚥しないように、上体を起こし、カッピーの大好きな餌のレパートリーを並べました。

    手から細かく切ったにんじんを食べたり、チモシー(牧草)を食べたり、満足したら、いらないと顔を振り、意思表示をしてくれました。

     

    「食べてくれた」

    「欲しがってくれた」

    ただ、ただ嬉しかったです。

     

    しかし、容態は悪化していく一方でした。

    薬を投与したり、点滴を流したりしているにも関わらず

    下がってほしくない数値は下がり続け、上がってほしくない数値は上がり続け、呼吸や心拍も変化し

    カッピー自身も時々ぼーっとし、焦点が合わず、呼びかけへの反応もなく、魂ここにあらず。のような時もありました。

    でも、ふっとまた帰ってきて、目が合い、口を動かしたり、体に力を入れ背伸びをすることもありました。

     

     

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    そして一晩、獣医師立会の元、カッピーと過ごすことにしました。

     

    3時間おきの寝返り、24時間続く点滴、排便・排尿のサポート、お腹を動かすために近赤外線を当てたり、足が痺れないようストレッチやマッサージしたりしていました。

    また、眠そうにウトウトはするものの、なかなか寝ないので、いつもの日向ぼっこの時のように頬を撫で続けると、目を瞑り少し眠ってくれたり、何か欲しそうにするたびに、上体を起こし、グリーンスムージーをシリンジで一滴ずつ舌の上に垂らしたりしていました。

     

    時々、何かの違和感で、足を動かしたり、顔を上下に振ったりしていましたが、なだめると、落ち着き、身を委ねてくれていました。

     

    徐々に明るくなる窓を見て

    「カッピー朝が来たよ。次の日を迎えられたよ」と、思わず声が出てしまいました。

     

    朝を迎え、神経症状の眼振や痙攣が出るようになったり、呼吸が乱れ、体温は下がるも、体が濡れるほど発汗したり、症状が悪化する事はあっても、残念ながら良くなることはありませんでした。

    そして、カッピーの様子も、ぼーっとしている事が多くなり、シリンジを噛むほど好きだったグリーンスムージーを舌の上に垂らしても、反応しなくなり、目も合わなければ、声かけをしても無反応で、カッピーが目の前にいるのに、いないように感じるようになりました。

     

     

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    朝一、獣医師含めふれあい広場のスタッフ全員で、カッピーの安楽死について話すことになりました。

     

    小さな可能性があるなら、その可能性に賭けたい。

    カッピーに少しでも生きていてほしい。この想いは皆同じでした。

     

    ただ、カッピーにカッピーらしく過ごしてほしい

    痛みや苦しみは、とってあげたい。この想いも皆同じでした。

     

    現状を客観視した時、今のカッピーの状態は

    「ただ、カッピーにカッピーらしく過ごしてほしい」

    「痛みや苦しみは、とってあげたい」 という事に当てはまりませんでした。

     

    何が正しくて、何が間違えなのか。

    カッピーの本心はどうなのか。

    そんな事、わかりません。

    私だって、カッピーの本心が知りたいです。

     

    だから、カッピーの1番近くにいる私たちが、カッピーの状態を考え判断する必要がありました。

     

    命と本気で向き合う現場で、命を繋ぎ「救う」という事だけではなく、

    自分ではどうにもできない現実を受け入れなければならない時もあるんだと、痛感した瞬間でした。

     

    絶対に受け入れたくなく、拒み続けていた安楽死。

     

    私たち、飼育員と獣医師はそれを選択しました。

     

    何度も、やっぱりやめると言おうと思いました。

    何度も、「今のカッピーの容態は悪化し続けているんだ」と自分に言い聞かせもしました。

     

    自分の中に納得いく答えが出ず、延々と考えてしまう一日でした。

     

    カッピーを見ると、涙がこぼれそうになります。

    しかし、雰囲気や空気感が伝わるとよくないと思い、いつも通りに接しますが

    カッピーは何となくわかってそうでした。私の、「ただ、ただ嫌だ」という感情は隠しきれてなかったと思います。

     

    それを思うと、担当者としてまだまだだな。と思います。

     

     

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    安楽死の実施は、閉園後でした。

     

    残された時間、カッピーと過ごします。

    色んな飼育員の方々が会いに来てくれました。

    飼育担当者、獣医師はもちろん常に隣にいます。

     

    ですが、カッピーはいつものようにはもう、反応しませんでした。

     

    チャームポイントでもあった、ぱっつん前髪の三つ編みを編み直し

    好きだったブラッシングをして、頬を撫でますが、いつものように安心して目を瞑ってはくれませんでした。

     

    沢山の獣医師、飼育員がカッピーを見守る中

    着々と準備が進められはじめました。

     

    何をしても、目が合う事なく反応のないカッピーでしたが

    最後に頬を撫でると、目が横に動き、目が合いました。

    そして、いつものように目を瞑ったんです。

    本当に、いつもする日向ぼっこの時と同じような時間でした。

     

    何で、何で最後になって、反応するんだよ。そう思いました。

     

    今まで見たなかで、1番安らかな顔でした。

     

    鎮静薬を打ち、眠らせたのちに薬が投与されます。

    鎮静薬が打たれると、力が抜け麻酔がきいた状態になるので、瞑っていた目が開きました。

     

    実は、まぶたは筋肉の力で閉じる事ができます。

    しかし、死後や麻酔をかける事でまぶたを閉じる筋肉が機能しなくなるので目が開きます。

     

    6月8日18時06分、カッピー(30歳)永眠

     

    カッピーにとって何が正しかったのか

    カッピーはどう感じていたのか

    今でも考えます。

     

     

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    そして

    今日もいつもの癖で、スマホからカッピーの様子を見ていたカメラのアプリを確認してしまったり

    馬房を覗いたり

    名前を呼んでしまったり

     

    私にとって、当たり前だった事が、当たり前ではなくなったこの瞬間。

    本当に、かけがえのない時間だったんだと、痛いほど感じています。

     

    歳を重ねることは、誰にでも訪れる自然な事です。

    体は少しずつ変わっていきますが、それでも一歩一歩懸命に生きる姿があります。

    「できることを、できるだけ、今日も大切に生きること」

    そんなカッピーの姿を、身近で見ていると、私も頑張ろうと思えました。

     

    私の人生にとって、カッピーの存在は大きなもので、かけがえのない時間で、本当に沢山のことを教えてくれた時間でした。

    こうして、文字として綴っていますが、文字なんかでは表せられないほどの気持ちでいっぱいです。

     

    動物園の飼育員として、みなさんに「伝える」という事をしなければいけません。

     

    カッピーと過ごした時間、経験を伝え、少しでも他の動物達のためになればと思っています。

    また、カッピーのことを、応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

    カッピーと共に、外で過ごしている時間に「かわいそう」という言葉ではなく

    「がんばれ」という言葉をたくさん聞けて、本当に良かったです。

     

    カッピーの担当者になれて、本当によかったです。

    カッピーからすると、思うことはたくさんあったかもしれませんが

    カッピーと過ごした時間は、私にとって宝物です。

     

     

    うまくまとめられず、申し訳ないですが 最後まで読んでくださりありがとうございました。

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